2022年4月1日に北米でGRカローラが発表されました。GRカローラはカローラスポーツをベースにGRヤリス譲りの1.6LターボエンジンとGR-FOURと呼ばれる4WDシステムを搭載しているスポーツモデルです。今回は4月1日に発表されたGRカローラの情報とGRヤリスの情報をもとに、GRカローラの価格予測や、どんな欠点や注意点があるのか現役自動車メーカーエンジニアが解説していきたいと思います。
GRカローラの車両価格予想
現時点で発表されていない車両価格ですが、国内での販売価格を予想したいと思います。参考にするクルマはGRヤリスのRSグレードが265万円、RZが396万円、ヤリスの1.5L 6MT Zグレードが189万円です。
GRヤリスRZとヤリスZの価格差は207万円になります。その内訳は、ざっくりと3ドアの専用ボディ化が68万円、1.6Lターボエンジン+GR-FOURで139万円です。カローラスポーツの6MT Zグレードが252万円であることから、最低でも252+139=391万円からの価格になると考えられます。
また、ヤリスのように3ドア化はしていないものの、エアインテークやカーボンルーフを含む外装等は一新されており、GRヤリスと同じくGRファクトリーで生産される場合、やはりGRヤリスとノーマルヤリスの価格差ぐらいにはなると考えられます。単純にGRヤリスとヤリスZの価格差をカローラスポーツの価格に上乗せすると、252+207=459万円となり、このあたりがスタート価格になると思われます。
欧州勢でライバルになりそうなメガーヌR.S.(494万円〜)、ゴルフR(600万円オーバー?)よりはリーズナブルとも言えるかもしれません。しかし、5人乗りだからといってファミリーカーとして使うには気が引ける金額だと個人的には感じます。
正式に発表された価格はRZグレードが525万円、モリゾーエディションが715万円と私の予想を60万円以上超える価格になってしまいました。予想がここまで外れた原因としては一般販売ではなく限定販売になったことが大きいと思っています。限定販売になった理由は世界的な半導体不足や原価高騰による部品供給の問題だとされています。断言はできませんが、部品供給等の問題解決次第では限定車の再販は十分可能性があると思います。
4WDカップリング機構のオイル温度懸念
GRヤリスが発売されてから数年経ち、機構上の弱点が見えてきました。その中で気になるのはカップリングのオイル温度上昇によるGR-FOUR(四駆機構)の機能停止です。GRヤリスの目玉の一つである四駆システムは、電子制御多板クラッチカップリングと前後で減速比の異なるデフを用いて前後の駆動力配分を制御しています。特にトラックモードやスポーツモードで後輪寄りの駆動力を連続で使用する場合、カップリング内では常にクラッチが滑っているため、熱が発生します。この熱はラジエーター等で冷やせるわけではないので、一定の温度に達すると機械を保護するために四駆の機能が停止し、FF状態になってしまいます。
GRカローラの場合、GRヤリスよりも200kg近く重く、出力も10%以上アップしている上にタイヤサイズもアップしています。そのため、カップリングへの負担も大きくなると考えられ、熱問題はGRヤリス以上になると考えられます。
もちろん、トヨタとしても対策をしてていることは十分に考えられ、オイルクーラーや熱容量の向上、冷却ダクト等の装備が設定されている可能性があります。休日にサーキットをガンガン走るような使い方を考えている方は、これらの対策アイテムをチェックしておくことをオススメします。
GRヤリスほどのハンドリングは期待できない
GRヤリスが登場したものの、3ドアであることや後席の使い勝手の問題で購入を断念した方は多いと思います。それに対してGRカローラは5ドアであり、家族がいる方にとっても検討に値する存在だと思います。
しかし、GRカローラに対してGRヤリスに近い走りの性能を求めている人にとって最大の懸念は200kg近い重量増だと思います。しかし、個人的な懸念はもう一つあり、それがハンドリング性能です。
もちろん、200kg近い重量増によるハンドリングの悪化も考えられますが、それよりも心配すべきはホイールベースが長くなったことと5ドアボディです。GRヤリスの3ドアに比べてドアの開口面積が大きくホイールベースが長いことで、ボディの横剛性(クルマに横Gが加わった時のボディの変形のしにくさ)は小さくなっている可能性があります。通常、ボディの横剛性を大きくするにはクルマのサイドシルやメンバーの基本骨格が重要であり、プラットフォームでほぼ決まってしまいます。カローラスポーツベースのボディにそこまで手を入れているとは考えにくいため、GRカローラはボディの横剛性がウィークポイントになっている可能性があります。
もちろん、スポット溶接の増打ちや剛性向上のためのブレースは追加されるはずですので、これらのアイテムでどこまでカバーできているか、試乗する際にチェックしたいと思います。
また、横剛性が低くなるとどのようにハンドリング性能が悪化するかというと、ステアリング操舵後の車両の応答性が悪くなります。クルマはステアリング操舵後、すぐ旋回するわけではなく、フロントタイヤにスリップアングルが付くことで発生した横力がサスペンションを介して車体に伝わり、車体の向きを変えます。車体の向きが変わるとリアタイヤにもスリップアングルが付き横力を発生します。車体に働く遠心力と前後タイヤの横力が釣り合っている状態が旋回中の力の釣り合いです。この釣り合い状態ではボディが曲げられており、この曲がりにくさがボディの横剛性です。横剛性が低いと、ステアリングを操舵し始めてから旋回中の力の釣り合いまでに車体がしなるため、ドライバーが感じる応答性の悪さや収束の悪さに繋がるというわけです。
まとめ
少し脱線しましたが、まとめです。
・日本でのGRカローラ販売価格は安くても391万円、本命は459万円が最低価格になると予想
・GRヤリスよりも重く、出力向上しているため、4WDのカップリング機構熱対策に懸念有り
・GRヤリスの3ドアボディに対してホイールベース延長、5ドアボディ、重量増によるハンドリング性能悪化の懸念有り
上記のように多少懸念点はあるものの、個人的にはGRヤリスよりも購入候補に入る1台です。やはり5ドアによる後席の使い勝手は魅力的です。家族を乗せて快適にドライブができ、一人で乗っても楽しめるクルマは多くはありません。試乗する際は後席の乗り心地をチェックしたいと思います。試乗記はコチラの記事内にあります。
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