
1. 電動ブレーキが必要とされる理由
従来のブレーキブースターは、エンジンの「負圧(バキューム)」を利用してブレーキの踏力をアシストする仕組みでした。しかしハイブリッド車やEVでは、エンジンが頻繁に停止する・もしくは存在しないため、電動によるブレーキアシストが必要になります。
2. iBoosterとは?
iBoosterは、ドイツのボッシュ社が開発した電動ブレーキブースターです。
特徴:
モーター駆動でブレーキ力をアシスト
負圧を一切使わないため、EVに最適
回生ブレーキと自然に連携
自動運転車にも対応する高度な制御性能
iBoosterは、ペダル踏力を検知すると、電動モーターが直接マスターシリンダーを押し込む仕組みで、ブレーキ応答が非常に速く、ブレーキフィールも調整可能です。
3. トヨタの電動サーボ(電動油圧ブレーキ)とは?
トヨタは独自に開発した電動油圧ブレーキ(ECB:Electronically Controlled Brake system)を採用しています。1997年の初代プリウスからこのシステムを搭載しており、世界的にも早い段階での実用化が特徴です。
特徴:
電動ポンプで油圧を発生・蓄圧器で保持
ペダル操作に応じて電子制御で油圧を配分
回生ブレーキとの協調制御に強み
アキュムレーターを使用(次世代では非搭載型も開発中)
トヨタのシステムは、回生ブレーキと摩擦ブレーキの滑らかな切り替えに重点を置いており、走行フィールを重視した設計になっています。
4. 比較表:iBooster vs トヨタ電動サーボ

項目 | iBooster(ボッシュ) | トヨタ電動サーボ(ECB) |
動力源 | 電動モーター | 電動ポンプ+アキュムレーター |
ブレーキ制御 | 直接機械的にマスターシリンダーを駆動 | 電子的に油圧制御 |
回生ブレーキ連携 | 優れている(0.3gまで対応) | 優れている(トヨタ独自制御) |
自動運転対応 | 高い(ESP®と組み合わせ可能) | 対応は可能だが仕組みが異なる |
メリット | シンプル構造、即応性、柔軟性 | 滑らかな制動制御、実績豊富 |
ブレーキフィール | 自然なフィーリングの車が多い | 自然なものと不自然なものが混在 |
主な搭載車 | 輸入EV・高性能車・一部日系車 | プリウス、アクア、クラウンなど |
5. ブレーキペダルフィールの違いとは?
ブレーキシステムの性能を語る上で無視できないのが、「ペダルフィーリング」です。
● 自然なペダルフィーリングとは?
ペダルを踏んだときの力(踏力)に対して、車の減速度が比例すること。つまり、ドライバーが感じる制動感と、実際の減速具合が一致していると「自然」と感じられます。
● iBoosterの特徴
iBoosterはペダルの踏力に対して直接アシストを行う設計です。そのため、踏んだ力がそのまま減速に反映される感覚が得られ、自然なブレーキフィールを実現しやすくなっています。
● トヨタの電動サーボの特徴
一方でトヨタの電動サーボは、ペダルのストローク量に応じてアシストを行う仕組みです。そのため、車種や制御仕様によっては、「踏んでも減速感が薄い」「突然強く効く」といった不自然なフィーリングになることがあります。
特に、ペダルフィーリングが自然に感じられる車種であっても、実際にはペダルの反力(戻りの力)が強くなっていることがあります。これにより、踏力を加えてもペダルが十分にストロークせず、ドライバーの意図に反してブレーキアシストが不十分となり、期待した減速度が得られないという現象が発生することがあります。
この問題は、制御アルゴリズム・アクチュエータの応答・油圧システムの設計などが複雑に絡み合った結果と考えられます。
このように、iBoosterは踏力中心、トヨタはストローク中心という設計思想の違いが、ペダルフィールや制動感の違いに直接つながっているのです。
6. 結論
iBoosterとトヨタの電動サーボは、それぞれ異なる方式でブレーキアシストを実現しています。iBoosterはより直感的でリニアな操作感を提供する傾向があり、特に運転フィールを重視するユーザーにとって魅力的です。
一方で、トヨタの電動サーボも熟成が進んでおり、車種によっては非常に優れた制御性能を発揮します。ただし、ブレーキペダルの感覚には車種ごとの差が大きく、フィーリングにバラつきがある点は意識しておくとよいでしょう。
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