ボディ剛性④ クルマの縦曲げ剛性とは

 ボディ剛性の第4回目は縦曲げ剛性です。ねじり剛性や横曲げ剛性と異なり、なかなか調べても出てこないのではないでしょうか?ここでは、クルマの縦曲げ剛性がどんな役割を果たすのか、縦曲げ剛性の解説や議論が少ない理由についても解説していきます。

クルマの縦曲げ剛性とは

 まずは縦曲げ剛性とは、どのように定義できるでしょうか。考え方はねじり剛性や横曲げ剛性と同じです。サスペンションがストロークしないように固定し、前後車軸間に上下方向の入力を与え、そのときの変形しにくさを縦曲げ剛性と言います。

 縦曲げ剛性が低いと、タイヤからの上下入力に対してボディが変形してしまい、サスペンションがストロークしなくなります。ボディ変形はダンピング(減衰力)が効かないため、バネとしての振動が残ってしまうのです。乗員は上下にユサユサと揺さぶられるため、乗り心地が悪いと感じます。

 特にスライドドアを採用するミニバンでは顕著です。2列目シート下のアンダーボディは上下方向に薄く(乗降性と室内空間のため)、サイドシルで剛性を出すこともできません(スライドドアのレールのため)。その結果、2列目シートの乗員がフロアから感じるブルブル振動がミニバン固有の泣き所となっています。

ねじり剛性から考える縦曲げ剛性

 剛性が低いとサスペンションがストロークしないと聞いて、ねじり剛性でも同じような説明があったことにお気付きでしょうか?ねじり剛性も縦曲げ剛性も、タイヤからの上下方向に対する剛性という意味では同じです。その違いは、左右のタイヤが同位相で上下するか(縦曲げ)、片方ずつ上下するか(ねじり)の違いです。

 また、ねじり剛性と縦曲げ剛性、どちらが車両性能に影響しやすいかというと、ねじり剛性です。これはクルマの四隅にタイヤが配置されていることに起因します。左右のタイヤの間隔が十分大きいため、タイヤへの入力は左右それぞれで違い、テコの原理で言うところのテコの長さが効くため、車体がねじられやすいのです。

 ボディ剛性の目標値を決めるときにはねじり剛性を使うことが多いのはこのためです。ねじり剛性を高める構造にすれば自然と縦曲げ剛性も高くなるので、縦曲げ剛性が単独で問題になることはあまりありません。

横曲げ剛性から考える縦曲げ剛性

 前回の記事では、横曲げ剛性を高めることにより、操縦安定性(特に操縦性)が向上することを解説しました。これは、前輪や後輪で生じたコーナリングフォースがすぐに車両全体に伝わるためです。

 縦曲げ剛性を高めても間接的に操縦安定性向上の効果は得られるかもしれませんが、縦曲げ剛性は横曲げ剛性に対して根本的な違いがあります。それはタイヤからの入力とボディ剛性の間にサスペンションストロークが入ることです。横曲げ剛性の場合、タイヤからの入力はサスアームやブッシュ、サスペンションメンバーを介してボディに伝わります。それが縦曲げ剛性の場合、スプリングが間に入るため横曲げ剛性ほどダイレクトに車体に伝わりません。

 タイヤからの上下方向の入力に対する剛性という意味で縦曲げ剛性はねじり剛性に近い性質を持ち、横曲げ剛性とは機能そのものが違うと言えます。

まとめ

・クルマの縦曲げ剛性とは、サスペンションを固定して前後の車軸に上下入力を与えたときの車体の変形のしにくさのこと

・縦曲げ剛性が低いとサスペンションが機能しなくなり、乗員が上下方向の振動を感じやすい

・クルマは縦曲げよりもねじりによる影響を受けやすいため、ねじり剛性を高めるように目標設定するが、結果的に縦曲げ剛性にも効く

・縦曲げ剛性はねじり剛性に近い性質を持ち、操縦安定性に効く横曲げ剛性とは機能が異なる

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