プレミアムコンパクトの地位を築けるか レクサスLBXの狙いと価格と不安

 コンパクトカーの理想の一つはプレミアム化です。数々のメーカーがプレミアムコンパクトのブランド化を目指し、その高い壁に阻まれてきました。レクサスLBXはそんなプレミアムコンパクトのBセグメント市場にレクサスが初参戦する重要モデルです。

狙うはMINIのプレミアム市場?

 LBXの狙いはMINIのようなプレミアムBセグメント市場ではないでしょうか?現在、国内で販売されるBセグメントクラスで最もプレミアムなモデルと言えば、MINIブランドです。MINI 3/5 DOORの現行モデルは2013年に発売し10年選手になっているにも関わらず、根強い人気を維持しています。MINIのHPによると5 DOORに最廉価グレードのONEはラインナップされておらず、最安は1.5LガソリンターボのCooperグレードが3,800,000円、最も高い2.0LディーゼルターボのCooper SDが4,520,000円という価格帯になっています。一方、国産代表?のヤリスクロスはHVの最上級グレードであるGRスポーツでさえ2,750,000円と、MINI 5 DOORの最安グレードよりも100万円以上安い価格です(MINIは装着OP価格も増えがち)。

 国外に目を向けてみても、欧州を中心とした先進国市場において、プレミアムBセグメントの王者は間違いなくMINIです(筆者主観)。今までもMINIのプレミアムBセグメント市場に参入したライバルは数多くいますが、なかなか太刀打ちできていないのが現状です。トヨタのヤリスクロスは欧州でも人気があり、昨今のトヨタ・ヨーロッパの販売を牽引している基幹車種のようです。レクサス・LBXはヤリスクロスで切り拓いたBセグメント・SUV市場の土台にプレミアムBセグメントとしてのレクサスを根付かせることができるかどうか、大事な勝負どころになりそうです。

予測価格は400万円から!

 上記のプレミアムBセグメント市場の考察を踏まえ、国内でのLBX販売価格の予想としては400万円〜550万円です。これはUX同等の価格帯です。従来の考え方であればUXの下の車格なので360万円クラスと思われますが、記者発表を見る限り今までとはちょっと違うかもしれません。『LBX』という新しいルールの車名にも現れているように、クラスレスを意識した発表でした。従来の車格が小さいから安くするような売り方はせず、走りの良さをレクサスブランドとして磨き上げ、高付加価値を持たせた商品になるのではないでしょうか?

LBXの売りはBセグらしいキビキビとした走り!(と小回り性能)

 LBXは走りに定評があるヤリスクロスをベースにしているので、走りには期待できます。特に全幅はヤリスクロスの1765mmから1825mmに拡大しているため、トレッドが広がることでキビキビとしたハンドリングには磨きがかかっていると思われます。

 トレッドを広げることにより、大径タイヤを装着してもボディと干渉せず、ステアリングの最大切れ角(最小回転半径)を犠牲にすることがないというメリットもあります。ヤリスクロスの最小回転半径5.3mに対してLBXの最小回転半径は5.2mと、逆に小さくできています。国内では敬遠されがちな大きな全幅ですが、欧州市場では全幅よりも最小回転半径が重視される傾向にあります。LBXはかなり欧州市場を意識したクルマではないでしょうか。

 ボディ骨格構造をヤリスクロスと比較してみました。特に剛性を強化している箇所はリアホイールハウス周りやステアリング周りです。どちらもハンドリング性能に大きく関わります。リアホイールハウスと開口部を繋ぐブレース形状がより高剛性化されている他、構造用接着剤が多用され、リアハッチ開口部の環状骨格構造も強化されているようです。リアホイールハウス周りの剛性を高くすると、ステアリング操舵後の車両の反応が早くなり、車両の上下左右の揺れの収束も良くなります。ステアリング周りの剛性を高めると、主にフィーリング面で効果があり、スッキリしたステアリング応答やブルブル振動が減り、良いもの感がグッと高まります。

不安…ヤリスクロスの弱点を克服できているのか

 一方でヤリスクロスで感じていた弱点を解決できているかが気になるところですが、レクサスの発表内容を見るとその大部分が解決していそうです。

 まずはエンジン振動です。ヤリスやヤリスクロスのGA-Bプラットフォームでは3気筒エンジン由来のブルブル振動が足元のフロアを振動させていました。これに対してはバランサーシャフトを追加し、振動発生の大元から抑えるという点はとても理にかなっています。バランサーシャフトが1軸か2軸かはわかりませんでしたが、大きな効果が期待できそうです。

 次にTHS-Ⅱのスポーツ性能です。高負荷域でモーターアシストが足りなくなるとエンジンの唸り音が響いてしまうのがシリーズ/パラレルHV共通の弱点でした。新型アクアはこの問題をバッテリー容量ではなく、バイポーラ型ニッケル水素電池を採用することでモーターの瞬発力を劇的に向上させましたが、LBXにもバイポーラ型が採用されるようです。ハンドリング性能が向上する分、動力性能もしっかり底上げすることでバランスの取れた運動性能になると思います。

 ヤリスクロスの数少ない弱点の一つは電動パワーシートのモーター作動音と操作性です。機構自体は画期的なもので、1つのモーターでシートの前後、上下、シートバック角度を調整できるスグレモノです。悪く言ってしまうとコストカットですが、低価格帯の商品にも電動パワーシートを採用できるという点で、ユーザーにとっても喜ばしいことです。問題はその作動音と操作性です。これは色々なメディアで指摘されているので、LBXには採用せず、間違いなく上級仕様の電動パワーシートがつくと思います。

まとめ

・LBXの狙いはMINIのようなプレミアムBセグメント

・国内での価格帯は400万円〜550万円

・LBXの売りはキビキビとしたハンドリング性能

・ヤリスクロスの弱点をすべて克服して登場する

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