GRカローラではなくシビックタイプRを選んだ訳

 先日GRカローラとシビックタイプRに試乗することができました。両方を試乗したインプレと最終的にシビックタイプRを選びオーダーした理由を紹介したいと思います。

GRカローラのインプレ

GRカローラ好評価ポイント

 まずは40km/h以内でゆっくりと走行してみました。意外にもクラッチミートしやすく、繋がるタイミングがとてもわかりやすかったです。運転感覚はカローラスポーツの良さを踏襲していて全体的にとてもイージーでした。ただし、ステアリングの剛性感は別物でステアフィールは抜群に良いです。ブレーキのフィーリングも良好で見た目だけのローター径や対向ピストンではないことがわかります。日常使いはカローラスポーツの良さ、スポーツ走行すればGRの良さが見えてくるのがいいところです。

 モリゾーエディションに関しては、上りのタイトコーナーでも低い回転数からグイグイ太いトルクで引っ張っていける力強さを感じました。RZグレードもそうですが、1.6Lのエンジンとは思えないパワフルさです。モリゾーエディション専用シートはややタイトですが、特別感があって良いと思いました。2シーター化等による軽量化も効いていて、豊田章男さんの狙い通り野性味あふれる特別なカローラになっていると思います。

GRカローラ残念ポイント

 ここでは残念ポイントを挙げていきます。まずはスポーツモデルとしては左足のフットレストが柔らかくて狭いことです。サーキットで走ったわけではないですが、これでは体を支えられないことが予想されます。購入された方は必要に応じてアフターパーツで強化するか、いっそバケットシートを入れることになるのではないでしょうか。

 二点目は曖昧な表現になってしまいますが、もう少し車両価格に見合う特別感が欲しいと思いました。外装は派手なGR仕様になっているものの、内装はそこまでベースのカローラからの変更がありません。メーターの演出やスウェード表皮のステアリングがドライバーをやる気にさせるものの、シートポジションやインパネの印象でカローラを感じてしまいます。

 GRヤリスが存在する中で、GRカローラの立ち位置は2通りあったと思います。一つはGRヤリスのさらに上のポテンシャルを持つスポーツモデル、もう一つは絶対的な運動性能はGRヤリスに譲り、オールマイティに使えるGRモデルです。結果としては前者を狙いに行ったようです(特にモリゾーエディションで)。理由は海外での立ち位置だと思います。北米市場ではGRヤリスは販売されていないため、GRカローラが唯一のGRコンパクトAWDモデルになります。そうなるとGRヤリスがある日本と違い、絶対的な性能を求められるはずです。また、欧州市場ではGRカローラは投入されません。もともとカローラよりもヤリス勢が奮闘しており、GRヤリスも売れているのでGRカローラは不要ということだと思います。私の個人的な感想としては、価格を抑えたマイルドなGRカローラも見てみたかったですが、GRヤリスとGRカローラが併売される日本ならではの贅沢な悩みだと思います。

シビックタイプRのインプレ

シビックタイプRの好評価ポイント

 写真ではなく初めて実車を見たときに感じたのは、リアオーバーフェンダーのカッコ良さです。先代のFK8やGRカローラでは後付のオーバーフェンダーで良くも悪くも改造車感がありましたが、今回のFL5ではサイドアウターパネルそのものの意匠面を張り出し、エレガントな力強さが感じられます。リアドアパネルも専用設計なので、見た目とは裏腹にシンプルなデザインのFL5の方がコストがかかっているはずです。

 運転席のシートは専用設計で、サポートがしっかりしている割に邪魔になりません。さすが、タイプRを作り続けているホンダです。コンフォートで走り出したところ、シビックの標準モデルかのように扱いやすく、低回転から高回転までエンジンのフィーリングが良く、キレイに力強く回ると感じました。さらに+Rモードにするとかなり気持ち良く回ります。これは排気音による気持ち良さも大きく、音の聴かせ方が上手いと感じました。+Rモードにするとハンドル操作は重くなりますが、不自然さはなくフィーリングが取りやすくなります。低速コーナーを立ち上がるときに2速でアクセルを全開にすると、ハンドルが取られるトルクステアが顔を出しますが、出かたは穏やかで唐突感はありませんでした。

 風切り音が少なく、シートのサポート性が良いので体感速度がメーター速度より低めに感じます。後部座席の膝前空間が広く、後ろに家族を乗せても快適に移動できると思いました。

シビックタイプRの残念ポイント

 電子制御ダンパーが装備されているので、コンフォートモードでは減衰力調整で乗り心地が良くなります。しかしスプリングのバネレート自体は高いままなので、どうしても段差で突き上げ感があります。家族を乗せて快適に移動したい方は、要チェックだと思います。

 エンジンのやや残念ポイントとしては、レブリミット回転数が低く感じることです。もちろんターボエンジンとしては十分高回転型の部類に入りますが、レブリミットまでのフィーリングがバイクの4気筒高回転エンジンのように気持ち良い分もっと回って欲しくなります。

 また、サーキット走行を見越したモデルなのである程度は仕方ないですが、タイヤサイズは攻め過ぎだと思いました。先代のFK8でも245/30R20というサイズでしたが、FL5では265/30R19となり、幅が約+20mm、ホイール径が-1インチ、外径が約-13mmです。ワインディングを楽しみたいと思っている私としては、荒れた舗装によるリムカットとほぼ専用サイズになってしまうタイヤの交換コストが気になってしまいます。

GRカローラではなくシビックタイプRを選んだ訳

 ここで本題です。私はGRカローラとシビックタイプRの両方に試乗し、シビックタイプRをオーダーすることにしました。ここではその訳を4つ説明したいと思います。

運転席に座ったときの高揚感

 インプレでも書きましたが、GRカローラは良くも悪くもカローラスポーツのGR版であり、特別感がそれほど感じられませんでした。シビックタイプRの方が運転席に座ったときの高揚感があり、特別なクルマに乗っているという実感が良かったです。具体的には、低めのシートポジション、専用の赤いシートや内装、アルカンターラ表皮のステアリングです。これらが外装の雰囲気にも良く合い、刺激的なのに運転視界の邪魔にはならないようにする設計の配慮に痺れました。

タイプRブランドへの信頼

 ホンダのシビックタイプRの歴史はEK9から数えて6代目、ターボ化されてから3代目になります。長く作っているから良いわけではないですが、長く作らないとできないクルマ作りはあると思っています。例えばですが、どちらも横置きエンジンの300PS級のターボ車なので熱対策が心配になります。シビックタイプRは先々代からターボ化されていて、代を経るごとに対策が施されています。GRカローラもGRヤリスの知見はありますが、シビックのようにベース車両を開発する段階からタイプRを作る前提での開発にはできていないはずです。

デザインの好み

 デザインは完全に好みの問題としても良いですが、私が気に入ったポイントはスッキリとした大人な外装デザインです。特にリアフェンダーの膨らみがたまりません。先代のFK8も購入を検討していましたが、ちょっとやんちゃ過ぎる外装デザインに尻込みしました。私以外にも同じ考えの方が多かったようで、今回のFL5では完全に私好みのデザインになってくれました。

4WDは不要

 シビックタイプRとGRカローラを比較検討する上で重要なのはFFか4WDかという駆動方式の問題です。駆動方式だけを考えたらGRカローラを選んだと思います。前後トルク配分ができるGR-FOURは路面環境を選ばないスポーティな走りができ、リア寄りのトルク配分にしたときにはFR車のようなステアリングフィールが得られることが私のお気に入りポイントです。

 それでもFFのシビックタイプRを選んだのは、周辺の道路環境を考慮してのことです。私が住んでいる地域はあまり雪が降らず、降ったとしても年に数回です。最近はスキー場までの道路も除雪が行き届いており、4WDのクルマを持っていてもそのトラクションを発揮する機会は少なくなってきています。もし除雪が少ない雪国に住んでいたらGRカローラを選んでいた可能性は高いです。

まとめ

 私はシビックタイプRを選びましたが、GRカローラも相手にとって不足はない実力を持っています。シビックタイプRがなければGRカローラを購入していたかもしれません。最後に購入する純粋なガソリンエンジン車を探している人も多いと思いますが、どちらのクルマも選んで後悔はしないと思います。私は環境対策のために電動化だけを目指すのではなく、バイオフューエル等の活用による内燃機関の存続も熱望しています。また、私だけではなく多くの人が望めば必ずその未来はあると思いますので、諦めずに行動していきたいと思います。

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