【試乗記】日産サクラ 軽EVの楽しさを見つける

 今注目の日産サクラに試乗し、最新軽EVの実力を体感することができました!20kWhの小容量バッテリーと日産ノート譲りのモーターによる走りは必要十分以上!補助金を含めたトータルコストパフォーマンスは軽全体で見ても最強クラスです。本記事では、試乗して感じた良い点と不満点、スペック等の考察をしていきます。そして軽EVの楽しさが少しでも伝われば嬉しいです。

上質な走りが◎

 日産サクラに対して感じた最も良い点は、その軽自動車とは思えない走りの上質さです。試乗コースではスタートしてすぐに大きな国道に合流する必要がありましたが、この時の印象がとても良いです。流れの速い道路に合流するような時の加速はこのクルマが最も得意としています。ギアチェンジ等で加速が途切れること無く、CVTのようにエンジンが高回転で唸ることもありません。また、アクセルレスポンスも良いので全くストレスがありません。パワートレインとしての性能は軽自動車の中で最良と言えます。

 次にハンドリング性能ですが、こちらもかなり高いレベルにあります。バッテリーを床下の低い位置後方に搭載しており、前後重量配分も55:45程度に改善されています。クルマとしての基本諸元がガソリン車よりも良くなっていることがハンドリングにも良い影響を与えています。具体的にはカーブでのロールや車体の揺れが少なく、車重が増した分乗り心地も良好です。

日産サクラ  バッテリー搭載位置

ブレーキ性能に不満あり

 走行性能で不満だったのはブレーキです。デイズに対して増えた車重に対してブレーキ性能が追いついてないと感じました。これはデイズと共通のブレーキ装置だけの問題ではなく、タイヤ性能の問題でもあります。少ないバッテリーでもなるべく航続距離を稼ぐため、当然エコタイヤを履いています。エコタイヤと雨で濡れた路面の相性は特に悪く、ブレーキのフィーリングとストッピングパワーの両面で頼りなさを感じました。

日産サクラは自主規制64PSが無かったら何馬力相当?

 日産サクラは軽自動車の自主規制のため最高出力は64PSに抑えられています。この自主規制が無かったらサクラの最高出力は何馬力相当なのでしょうか?

 ずばり、75PS(55kW)相当の最高出力になると考えられます。サクラに搭載される20kWhバッテリーはリーフの40kWhバッテリーを半分にしたものだというのがその理由です。並列接続のユニット数を半分にしているので、バッテリー総電圧は350Vのまま、取り出せる電流が半分になるので最高出力(≒バッテリー出力電力=電圧×電流)は半分になります。リーフの車両諸元を見ると最高出力は150PS(110kW)なので、さくらの場合その半分の75PS(55kW)相当の最高出力になるというわけです。

 エンジン車に慣れ親しんだ人にとっては、200Nmのトルクにくらべて控えめに感じるかもしれません。しかしEVの世界では、トルクはモーターで決まり、最高出力はバッテリー側の出力で決まるというのが一般的です。街乗り等の低速域では非常にスムーズに走れる一方、高速域では思ったほど伸びがないと感じることになります。

加速の良さとトランスミッション

日産サクラ  モーター出力特性

 195Nmのトルクで加速は良いですが、変速機は無いので1速の固定ギヤとなっています。そのため、軽ターボの倍の加速力があるかというと、そうではありません。今回はサクラの上級グレードと日産デイズ ハイウェイスター ターボのスペックから実際の加速度や速度を概算してみました。概算の方法としてはそれぞれのスペック表の最大トルク、最高出力、回転数、変速比、最終減速比、上級グレードの車重を使い、成人男性の体重70kgを加え、速度に比例する走行抵抗を同じ条件で与えました。

日産サクラとデイズ  加速比較  概算

 結果、EVのサクラの方が0km/h付近の発進加速が優れるものの、20km/h付近でターボ&CVTがトルク最大、変速比最大の時の加速はEVよりも上です。その後の伸びは同等ですが、初期のリードがある分、0-100km/hの加速としてはサクラの方が速いという結果です。100km/hの到達時間は0.4秒差しかありませが本当にそうでしょうか?

 ここでさらにCVTの伝達効率を考慮します。CVTの伝達効率は一般的に80%前後だと言われています。軽ターボのエンジン出力に0.8をかけて再計算すると、サクラの0-100km/h加速が9.4秒、デイズターボの0-100km/h加速が14.0秒と、その差は4.6秒まで広がります。実測値ではなくあくまでも概算ですが、この差は実際の感覚にも近いのではないでしょうか?

日産サクラ  デイズ  加速比較  CVT伝達効率考慮

EVはつまらない?

 この記事で本当に伝えたいことはサクラとデイズの0-100km/hの加速タイム比較ではありません。EVの加速が良いと言われている理由はトランスミッション(特にCVT)を介さない伝達効率の良さにあるということです。今回は理論上の最大加速度の計算でしたが、実際にはトランスミッションの変速にかかる時間やターボラグ等の時間もあるため、中間加速や過渡領域での扱いやすさやダイレクト感においてもEVが優れており、ある意味MTに近い操る楽しさがあります。

 『EVはつまらない』という杓子定規的な考え方を持つ人も多いですが、ガソリンエンジンの時代も同じような状況は有りました。排ガス規制や騒音規制です。しかしそれでもクルマは進化してきました。私達に必要なのは、そこにある楽しさに気づくこと、そこにあるもので楽しむことだと思います。軽EVであってもアクセルに対する応答性はEVそのものです。これからもこういった楽しさに気づき、発信していきたいと思います。

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