2020年12月25日から法人や自治体向けに販売開始したトヨタC+pod(シーポッド)ですが、2022年には一般販売も開始されます。全長2,490 mm、全幅1,290 mm、全高1,550 mmの大きさで、超小型モビリティ規格の電気自動車です。小さいクルマで特に気になるのがその安全性です。今回は超小型モビリティの規格や保安基準、安全装備の観点からトヨタC+pod(シーポッド)の安全性を確認していきます。
超小型モビリティとは
超小型モビリティとは、地方での小型モビリティ有効活用やCO2削減推進を背景に法整備が進んでいる自動車規格です。上の表の太枠内が超小型モビリティとされています。トヨタC+pod(シーポッド)は超小型モビリティ(型式指定車)に該当し、全長2,490 mm、全幅1,290 mm、全高1,550 mmと軽自動車よりもかなり小さく、取り回しの良い大きさとなっていますが、これでも全長と全幅は規格の大きさをめいいっぱい使い切っています。
トヨタC+podの動力性能
トヨタC+pod(シーポッド)は最高出力:9.2 kW (約 12.3 ps)、車重:670kg〜690kgということで、同じ大きさの第一種原動機付自転車(ミニカー)と比べて一般的に車重は重くなる(コムス車重:410kg程度)ものの、約15倍の出力となっています。すでに試乗しているモータージャーナリストのコメントでは、平坦路は不足はないものの登り坂ではやや不満もあるようです。スペックから見てもわかるように、EVとして期待されるような力強い加速ではないですが、日常の足として十分な動力性能が与えられています。そのため、信号待ちからの発信加速で乗用車について行けず怖い思いをすることは無さそうです。
予防安全と衝突安全
超小型モビリティ(型式指定車)は基本的には登録車(軽自動車)と同様の法規に適合させる必要があります。国内では安全基準では、軽自動車のESC(横滑り防止装置)の装着が2014年10月1日から義務化、2021年11月以降の新型車には衝突被害軽減ブレーキが義務化されており、これらが超小型モビリティ(型式指定車)にも適用されます。
トヨタC+pod(シーポッド)はトレッドやホイールベースが狭く、不安定そうにも見えますが、床下にバッテリーを搭載するEVなので見た目以上に重心は低く、電子制動力配分制御付ABSや前述のESC装備により操縦安定性能が確保されています。
操縦安定性や被害低減ブレーキによりまずはぶつからないことが前提ですが、それでもぶつかった/ぶつけられた場合の衝突安全性能を見てみましょう。
超小型モビリティ(型式指定車)の場合、衝突安全性能に関する法規では全面衝突とオフセット衝突ともに40㎞/hに衝突速度が緩和されています。これは超小型モビリティ(型式指定車)は高速道路や自動車専用道路の走行は出来ず、運用上の最高速度が60km/h以下であることや低速域では死亡事故が極端に低くなることが理由のようです。
こちらでトヨタC+pod(シーポッド)の製造過程が公開されています。ボディ構造は一般的な乗用車のモノコック構造(外骨格でフレームと外板を兼用し、衝突性能と剛性が高い)ではなく、板金構成のアンダーボディにパイプフレームの上屋の骨格をボルト締結しています。
アンダーボディは一般的な乗用車の前側下半分の構造に見えます。トヨタの高い生産性が活きてくる部分です。衝突時の衝撃は主にアンダーボディで受け止める構造であることもわかります。重心が低いことからフロントピラーには大きな力は入らず、運転席からの視界確保や低重心化のためにパイプフレームを採用していると考えられます。
乗員保護性能としても乗用車と同様のエアバッグやシートベルトが採用され、プリテンショナー(衝突の瞬間にベルトを締める上げる)やフォースリミッター(ベルトにかかる荷重に上限が設定されている)など、小さいクルマだからといって妥協は見られません。
大型トラックの間に挟まれるといった特殊な状況を考えると乗用車と同様とまでは言えませんが、大きい車が走らない生活道路が主な走行シーンであると考えると、十分な安全性能を確保していると言えます。
超小型モビリティへの参入障壁
前述したように保安基準は衝突速度が緩和されているもののそれ以外に大きな緩和項目はなく、依然として既存メーカー以外の参入は厳しいと言わざるを得ません。トヨタは既存の技術や生産設備を使えますが、165万円〜という価格と現状の生産台数では利益は無い(むしろ赤字)だと思います。新規事業者が参入し、設備投資の回収を考えるとユーザーとしては割高と感じる価格設定になってしまうと考えられます。
今後、予防安全技術による事故率低減が認められ、衝突安全に関わる法規の規制緩和が進めば新規事業者の参入も比較的容易になります。また、バッテリーや駆動用モーターユニットのモジュール化が進めば新規事業者にとっては設備投資の面でメリットになります。
現状では参入障壁が高い超小型モビリティですが、今後の法規や市場動向次第では新興メーカーや他業種の参入も不可能ではありません。
まとめ
トヨタC+pod(シーポッド)は超小型モビリティ(型式指定車)に該当し、全長2,490 mm、全幅1,290 mm、全高1,550 mmと軽自動車よりもかなり小さく、取り回しの良い大きさです。
EVとして期待されるような力強い加速ではないですが、日常の足として十分な動力性能が与えられており、周りとの速度差による危険は少なそうです。
予防安全装備、衝突安全性能ともに十分な性能が確保されており、大きい車が走らない生活道路では安心して運転できそうです。
現状では参入障壁が高い超小型モビリティですが、今後の法規や市場動向次第では新興メーカーや他業種の参入も不可能ではありません。
最後になりますが、ソニーが電気自動車を発表したように、もっと色々なメーカーが参入できると超小型モビリティは面白い世界になりそうです。地方での小型モビリティ有効活用やCO2削減が背景にある超小型モビリティですが、これをきっかけにもっと楽しいモビリティが増え、環境にも生活にも趣味にもWIN-WINになることを期待しています。
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