2023年1月6日にテスラがモデル3とモデルYの価格改定を発表し、日本でも車両価格が約10%も安くなりました。この値下げの理由を考察してみたいと思います。
値下げの理由その1 生産能力向上分の調整
2022年半ばにテスラの上海工場で生産能力の増強を行いました。この上海工場はモデル3とモデルYを生産しており、2022年末には同工場での在庫車が増えているというニュースも飛び交っていました。それもあり値下げが発表された直後は『テスラが売れなくなって在庫を抱えている!』『ヤバいんじゃない?』との疑念からテスラ株が売られました。
しかし、生産能力を増強させたのはテスラが売れていたからなので、一時的な需要減とも考えられます。そもそもテスラは2030年までに2000万台を生産するとマスク氏が発言しているように、上海工場の生産能力向上は序の口と言えます。今回は結果的に生産能力向上と需要減のタイミングが重なったために、需要を喚起するための手段として値下げを行ったと思われます。その狙いは値下げを行わずに生産設備を止めるよりも値下げをして生産設備を稼働させたほうが総合的には利益になるという経営判断で間違いありません。他のメーカーでもよくあることです。
値下げの理由その2 テスラ独自の販売網
ではなぜテスラの値下げがこんなにもニュースになるのでしょうか?理由の一つはテスラ独自の販売網だと思います。テスラは他の自動車メーカーと異なり、基本的には販売店舗を
持たず購入はウェブサイトからとなります。そのため、値引き交渉などは一切なくワンプライスでの購入となります。
一方、他メーカーのディーラーでは生産調整のために値引きを使います。売れ行きが不調の車種に関してメーカーから値引き可能額のお達しがあり、その値引き可能額の範囲内でディーラー毎に値引きを行います。この仕組みの悪いところとしては、お客さんから値引き可能額の上限がわからないところにあります。そのため、お客さんとディーラーとの間で余計な駆け引きが生まれ、クルマの購入を複雑にしてしまっています。
テスラの販売はワンプライスだからこそ、一律で一斉値引きが可能であり、ある意味公平で無駄がない売り方とも言えます。
値下げの理由その3 テスラブランド全体の価格帯を調整?
テスラが2030年に本気で2000万台規模の生産台数を目指すのであれば、現在の高級車寄りのブランドイメージとは大分違ってくると思います。現在のトヨタ自動車の生産台数が1000万台規模なので、その2倍というと途方も無い数ですが、ブランドイメージもそれなりに変える必要があります。トヨタ車の2倍も売れていたら高級車ではなく大衆車です。価格帯も下げていく必要があるので、今回の値下げは大衆車ブランドに転身するための一歩である可能性が見えてきます。つまり、長期的には生産設備を2000万台生産に向けて増強していき一般庶民にも手が届く価格帯までラインナップを揃え(モデル2など)、短期的には需要と供給が合うように価格改定を行っていくというストーリーです。
まとめ テスラを買うなら今か?
長期的にはテスラ全体の価格帯が下がっていく可能性はありますが、今は一つの買い時だと思います。理由としては高いリセールバリュー(中古車として売ったときの価値)を狙えることです。リセールバリューを左右する要因はいくつかありますが、新車販売価格はダイレクトに影響します。今回の値下げで既存のユーザーが売るときの下取り価格は下がってしまったことになりますが、逆にこれから買うユーザーにとっては有利に働きます。世界的なテスラ需要が戻ったときに再び値上げされた場合、中古車相場も上がり下取り価格も上がるからです。もし更に値下げという事態になれば中古車相場も崩れますが、中国では急な値下げによる反発も強かったこともあり、これ以上の値下げは慎重に行うと思います。
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