最新の2.0Lエンジンを載せたTNGAハイブリッドシステムを搭載する新型プリウス(5代目、60系)に試乗しました。FFモデルのZグレード(タイヤ:YOKOHAMA ブルーアースGT 195/50R19 )を試乗したところ、スムーズなアクセルコントロールや力強さやコントロール性が磨き上げられたモーター駆動など、多くの良い点を感じました。しかし、外観デザインを優先したことによる悪い点や、操縦性での違和感もあり、新型プリウスをおすすめできない人もいます。
新型プリウスの良いところ
第一印象は走り出しがスムーズでアクセルでの速度コントロールがしやすいことでした。さすがは最新の2.0Lエンジンを載せたTNGAハイブリッドシステムです。モーター駆動の力強さやコントロール性は磨き上げられています。ステアリング操作に関しても緩みや遊びが無く、過敏で無いため快適に走れます。また、段差等の乗り心地は50扁平の19インチを装着しているとは思えないほど良い出来でした。
新型プリウスをおすすめできない人
後席を頻繁に使う人や室内空間にゆとりが欲しい人
外観デザインを優先した分、室内はかなり狭く感じました。具体的には、前席に座ったときにフロントピラーが乗員の頭に迫ってくるため、車格から抱くイメージよりも室内がぐっと狭く感じます。リア席でも後ろに傾斜したルーフによって頭上空間が狭く、乗り降りするときにも頭をかがめる必要があります。さらに、後席乗員の着座位置が下がったこともあり、クルマを降りるときに足をそのまま車外に出すとズボンの裾が汚れてしまいそうです。
今までのプリウスには燃費を良くするという使命がありましたが、今は燃費を追求するという大義名分が無いにもかかわらず、デザインのために室内空間や後席の乗降性を犠牲にしたクルマになってしまっています。ミニバンやSUV、軽ハイトワゴンなどの広い室内空間に慣れた家族を乗せるなら、不満が出ないか事前に確認しておくことをおすすめします。
スポーツカーのような走りを楽しみたい人
新型プリウスでは小径化したステアリングを採用していますが、運転してみるとやや違和感がありました。スポーティに感じる場面もありますが、スポーツカーほどステアリングと車両に一体感が無いので、ラフな操作にならないように逆に気を遣ってしまいます。
また、クルマの挙動にも気になる点があります。具体的には直進状態からカーブに入ってステアリングを切り増したところで車両の横方向の動きがグラっと大きくなります。これは走行抵抗や乗り心地を考慮したサスペンションジオメトリーの結果ではないでしょうか。もちろん、スポーツカーでもない国産乗用車なので通常走行で不満はありません。ただし、走りの良さをアピールするのであれば、燃費を多少犠牲にしたとしても煮詰めてほしいところです。
最新の2.0L TNGAハイブリッドシステムにも期待していましたが、登り坂で緩やかな加減速を行うとエンジン回転数が頻繁に上下し、運転者がパワートレインとの一体感を感じられません。このあたりの感じさせ方は、同じハイブリッドでも日産のe-powerやホンダのe:HEVのシステムの方が上手いと考えています。
Youtubeのレビュー動画などを見て走りの良さを過大に期待しすぎると、納車後にがっかりしてしまうかもしれません。走りの楽しさには期待しすぎず、試乗するときには上記のポイントを頭に入れておいてほしいと思います。
まとめ
ハイブリッドカーが当たり前になってしまった今、プリウスをパーソナルカーとして存続させるためにデザインや走りにフォーカスしてきたのはわかります。しかし、それらを優先することで室内空間や乗降性が犠牲になっていたり、スポーティーに振り切れてないところがありました。これらは多少なりとも乗り手を選ぶことになるので、購入するときは注意していただきたいです。
おまけ:普及価格帯のプラグインハイブリッドを出してほしい
今回の新型プリウスPHVはプリウスの上級グレード的な立ち位置で設定され、やはり高価格帯になります。プラグインハイブリッド推しの筆者としては、今回のプリウスをタクシーとプラグインハイブリッド専用にしても良かったのではないかと思います。もしくは、日本の交通環境に合うBセグメント程度の車格(アクアなど)で300万円台のプラグインハイブリッドを出してほしいと願っています。
現状、プラグインハイブリッド車の普及はEVに阻まれており、世界的にも過小評価されているふしがあります。ハイブリッド車にとっての過去のプリウスのように、プラグインハイブリッドを牽引するランドマーク的な車種が一般市民の手の届きやすい価格で登場してくれたら、より明るいクルマの未来が想像できそうです。
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