マツダ ロードスターに新グレード990Sが追加されました。990Sは15Sグレードをベースに更に軽量化にこだわり、軽量な鍛造アルミホイールで1本800g 1台当たり3.2kg軽くなっています。他にもブレンボキャリパーやネイビー色の幌、KPC(キネマティックポスチャーコントロール)などで商品力を上げています。元々軽さに定評があり、990Sではさらに軽さにこだわっていますが、こだわりの裏には背反(両立しない)性能があると考えるのがエンジニアです。今回追加された新機能のKPCと軽さにこだわった990Sのデメリット・注意点について解説していきたいと思います。
マツダ・ロードスター(No.13) チューニング&ドレスアップ徹底ガイド (ハイパーレブ*ニューズムック 車種別チューニング&ドレスアッ) |
ぎりぎり街中の交差点でわかる!KPCの効果
ロードスターに限らず思うことですが、特に今回はこのクルマを評価する上でディーラー周辺の試乗コースでは物足りない、というのが正直な感想です。何事も自分で確かめたい私のようなタイプはモータージャーナリストの意見を鵜呑みにしてクルマを購入することはないので、ディーラーの試乗コース内で試すしかありません。
2022年モデルのロードスターの注目ポイントはKPCなのですが、試乗中ハンドルを左右に切ってクルマを揺さぶってみてもロールが大きく、今までのロードスターと変わりません。それもそのはず、作動する横Gは0.3G以上です。これはワインディングでも走らないとなかなか発生しない横Gです。少し速めのスピードで交差点に曲がると、たしかにロールが少なく、安定して曲がることができました。
重量増もなくブレーキ制御だけで追加でき、ハッキリと体感できる良い装備だと思います。しかし、NDロードスターが出たときの思想はもっとユーザーフレンドリーだったと記憶しています。初心者がゆっくりと普通に交差点で曲がっただけわかるダイアゴナルロールを含む自然なクルマの動きこそがNDロードスターの美点でした。0.3G以上とそれ以下のG、ワインディングと街中、これらを区別するのはNDロードスターでやることでしょうか?0.3G以下の微速領域からシームレスにKPCを効かせて欲しい、というのが私の思いです。
990Sのデメリット・注意点①割り切ったNV性能
NV性能とは、Noise(ノイズ、雑音)とVibration(振動)の頭文字を取ったもので、人が感じる音や振動の不快感の少なさです。
990Sは最廉価グレードの15Sをベースとしているため軽いことが最大のメリットです。その反面、走りに効かないフードインシュレーター(ボンネットの裏に付けるエンジンノイズを低減するパーツ)などが省かれています。外からはわかりませんが、ボディ内部で音を遮断するバルク材等も省かれていると思われます。
試乗するとわかりますが、特に後方からの音の侵入が大きいです。『幌タイプのオープンカーだから』と割り切ることもできますが、普通の遮音材が入ったグレードと比べると、気持ちよく聞きたい排気音以外の雑音が多い印象です。ドライブ中に会話も楽しみたい方や音楽を楽しみたい方、何よりもデートカーとして使う可能性がある方は注意が必要です。ディーラーで試乗するときには『音』が自分の許容範囲内か確認してみてください。
990Sのデメリット・注意点②乗り心地の悪さ
NV性能ほどでは無いですが、乗り心地も悪化していると感じました。原因は車体の軽さとバネレートが上がったこと、軽量な鍛造アルミホイールです。足回りの軽量化によって路面追従性が良くなり、乗り心地にプラスに働く場合もありますが、基本的には悪化する方向です。路面からの入力がタイヤで減衰されず、ダイレクトに軽い車体を揺らしてしまうからです。
元々乗り心地が悪いクルマでは無いですが、前述のNV性能と相まって助手席の人には快適とは言えません。ただし、一人用のクルマとして走りを楽しむ分には路面からの情報量が多く、走り出しも軽いのでメリットの方が多くなると思います。
まとめ それでも欲しくなる究極のロードスター990S
この記事では、廉価グレードをベースとしていることによるNV性能の悪さと軽量ホイールによる乗り心地の悪さに言及しました。むしろ注意点としてはそれぐらいと言えます。頻繁に助手席に人を乗せたり、デートカーに使うことを考えなければこれほど魅力的なクルマはなかなかありません。
ND型としてこれ以上の軽量モデルは今後出ないと思います。元々軽量であることにこだわって作られたND型の中でも究極の1台だと言えます。今後、ロードスターが新型になったとしても1トン切りの車重は厳しいと言わざるを得ません。その時に中古車市場でNDロードスターの価値が見直され、最軽量モデルの990Sは輝いて見えるはずです。将来的なリセールバリューは約束されたも同然なので、独身の若者がちょっと無理をして購入したとしても後悔することにはならないと思います。
長くなりましたが、まとめるとNVと乗り心地の注意点はあるものの、一人で走りを楽しむならとてもおすすめの究極のND型ロードスターです。
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