ホンダ 新型N-ONE JNCAP自動車安全性能評価の解説

新型N-ONEのJNCAP評価結果が公表されました。その内容を初心者にもわかりやすいように解説していきたいと思います。

JNCAP自動車安全性能評価 総合得点

ホンダ新型N-ONEの総合点数は ★★★★☆ (5段階評価で4つ星) 得点率は80% (153.16 / 190点) という結果です。2020年度から新たに厳しい評価基準になっています。4つ星とはいえ予防安全性能も充実しており、十分な安全性能を持っていると思います。

ホンダN-ONEの各評価結果は以下のようになっています。

衝突安全性能:Bランク 76%  (76.41点 / 100点)

予防安全性能:Aランク 93%  (76.75点 / 82点)

事故自動緊急通報装置※:装備なし

 ※エアバッグが展開する事故が起きた際に自動的にコールセンターに通報するシステム

 衝突安全性能と事故自動緊急通報装置が5つ星の基準には達していません。5つ星を獲得するには、衝突安全性能でAランクを取り、事故自動緊急通報装置を装備する必要があります。事故時緊急通報装置を軽自動車で採用しているのは日産のデイズとルークスのみ(2022年1月現在)です。2020年度の新基準でJNCAP5つ星は軽自動車にとってコスト的に厳しいと言えます。

N-ONEの衝突安全性能

 N-ONEの衝突安全性能:Bランク 76%  (76.41点 / 100点)

こちらの中身を見てみましょう。下記の表に100点満点換算した各評価項目の点数を載せます。比較対象として、前回Bセグメントコンパクトカー同士で比較したヤリス、フィット、ノートの3台を併記します。これらコンパクトカー3台はAランク評価のため、BランクのN-ONEの得点が不足している項目がわかりやすいかと思います。

衝突安全性能の試験項目配点N-ONEヤリスフィットノート
フルラップ前面衝突 (運転席)119.58.710.29.8
フルラップ前面衝突 (助手席)118.810.910.810.8
オフセット前面衝突 (運転席)119.910.59.910.1
オフセット前面衝突(後席)117.49.79.810.2
側面衝突 (運転席)1414.014.014.013.3
後面衝突頚部保護 (運転席)0.50.430.490.460.47
後面衝突頚部保護 (助手席)0.50.430.490.460.47
歩行者保護 (頭部)3219.224.423.523.0
歩行者保護 (脚部)54.75.05.05.0
シートベルト着用警報42.13.13.13.6
合計10076.487.387.386.8

 まずはフルラップ前面衝突(助手席)が、コンパクトカーに比べて2点ほど下回っています。フルラップ前面衝突とは、クルマ同士の正面衝突を模擬した試験です。減点されているのは頭部障害値と胸部変位量です。助手席に乗っている人(試験では小柄な女性を模擬しています)の脳や頭蓋骨骨折、肋骨骨折などによる重症化率が(致命的ではないものの)やや高いという評価です。

 N-ONEはプラットフォームを共通化しているNシリーズの中でも小さく軽いため、乗員傷害値には不利に働いていると考えられます。

 オフセット前面衝突(後席)でも、コンパクトカーに比べて2点以上下回っています。オフセット前面衝突とは、正面衝突の中でも対向するクルマ同士が横にずれた位置で衝突する事故を模擬した試験です。減点されているのは頸部の引張荷重と胸部変位量です。首や肋骨骨折などの重症化率がかなり高いという評価です。

 試験の映像を見ると、衝突による衝撃で乗員が横方向に移動するため、肩にかかっているベルトが下にずれ、胸を圧迫していることがわかります。N-ONEでは後部座席のシートベルトにプリテンショナー※1とフォースリミッター※2という機能を採用していません。そのためにこれらの傷害値の悪化が起きていると考えられます。

 ※1プリテンショナー:衝突を検知した瞬間ベルトを巻き上げてベルトによる拘束力を上げる機能

 ※2フォースリミッター:ベルトの引張荷重の上限を設定し、必要以上に乗員を拘束しないようにする機能

 次に、歩行者保護 (頭部)ではコンパクトカーに比べて4点程度下回っています。歩行者保護(頭部)とは、クルマに跳ねられた人の頭部を模擬したインパクタをボンネット周辺に打ち付けて頭部の傷害値を評価する試験です。背の低い軽自動車はボンネットが小さくて低めの位置にあるため、不利な傾向にあります。

 特に今回のN-ONEでは、外板を先代から流用しているため対策が難しかった可能性があります。

 もしも、これらの3項目が前述の3台のBセグメントコンパクトカー並であれば、衝突安全性能としてはAランク相当になります。しかし、コストが厳しい軽自動車であることや後部座席の使用頻度を考えると、妥当な性能割付であると言えます。

N-ONEの予防安全性能

 N-ONEの予防安全性能:Aランク 93%  (76.75点 / 82点)

衝突安全性能に比べて予防安全性能は5つ星の基準をクリアしており、高い安全性能を持っています。評価結果は下記のようになっています。

予防安全性能の試験項目配点N-ONE
被害低減ブレーキ(対車両)1111
被害低減ブレーキ(対歩行者:昼間)1514.14
被害低減ブレーキ(対歩行者:夜間)3836.89
車線逸脱抑制1111
後方視界情報22
高機能前照灯41.12
ペダル踏み間違い時加速抑制10.6
合計8276.75

 被害低減ブレーキの項目ではやや減点がありますが、前方の車両や横断歩行者にぶつかりそうなシチュエーションの殆どのケースで接触を回避しています。

 車線逸脱抑制の項目では減点はなく、クルマがハンドルを操作して車線を超えるのを防いでいます。

 高機能前照灯の項目では、減点があります。N-ONEは前照灯にオートハイビームを採用しているものの、対向車への眩惑を防止する装置が無いことで減点されています。

 ペダル踏み間違いの項目でも減点があります。後方誤発進抑制機能はついており、クルマが注意喚起をしてくれますが、停車までの機能はありません。

 全体としては、Aランクと呼ぶにふさわしい予防安全性能を持っていると言えます。2020年度の新しい安全基準に軽自動車でもしっかりと対応しています。ただし、高齢者や初心者の運転を考えると、ペダル踏み間違いの衝突回避まで対応して欲しかったというのが本音です

まとめ

ホンダ新型N-ONEの2021年JNCAP自動車安全性能評価は2020年度から始まった新基準で4つ星を獲得 ★★★★☆  80% (153.16 / 190点)

衝突安全性能:Bランク 76%  (76.41点 / 100点)

予防安全性能:Aランク 93%  (76.75点 / 82点)

・N-ONEはプラットフォームを共通化しているNシリーズの中でも小さく軽いため、衝突安全性能の乗員傷害値は不利

・後席のシートベルトにプリテンショナー機能とフォースリミッター機能を装備していないため、オフセット前面衝突(後席)の乗員保護性能は低い

・被害低減ブレーキの試験では前方の車両や横断歩行者にぶつかりそうなシチュエーションの殆どのケースで接触を回避

・ペダルの踏み間違いをしてしまっても注意喚起のみで停車の機能は無い

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