フォルクスワーゲンによると、2021年の輸入SUVの登録No.1の座は見事T-Crossが獲得しました!(ちなみにNo.2はフォルクスワーゲン T-Roc)最近改めてT-Crossに乗る機会があり、輸入車SUVとしては一見地味なT-Crossが売れている理由を現役自動車メーカーエンジニアが分析してみました。
【好印象】パワートレインが◎
エンジンは1.0Lの3気筒ターボエンジンで出力は116PS/200Nmと、ゴルフ8の1.0Lエンジンなどと同じ出力です。これに7速DSGが組み合わされることでかなり軽快感があります。それもそのはずゴルフ8の車重1310kgに対して1270kgと40kg軽く、DSGがダウンサイジングターボの美味しい回転数を上手く使うので不満は全くありません。
また、フォルクスワーゲンらしいハンドリングの良さが光ります。直進付近からステアリングの手応えが自然な上、小さい舵角からしっかりと曲がる力を発生させます。それによりオンザレールの感覚が強く、ハンドルを保持する力も少なくて済むので肩の力を抜いて運転ができます。
T-Crossのタイヤサイズは16インチから18インチで、タイヤによって印象が大きく異なります。16インチタイヤは205/65R16サイズのブリジストントランザを装着していました。エアボリュームが十分あり、乗り心地とハンドリングのバランスが良い優等生タイプです。18インチは215/45R18のピレリチンチュラートP7を履いており、街乗りではコツコツした突き上げがあるものの、滑らかな路面ではスムーズさを感じます。速度がすこし上がるとコツコツ感は気にならず、安定感が際立っていきます。ワインディングを一人でドライブする人なら18インチがおすすめです。高い速度域まで上屋の無駄な動きが驚くほど少ないので安心してワインディングを楽しめます。
【欠点】アイドリングストップからの始動が△
欠点やデメリットを上げるとすれば、アイドリングストップからのスタートでギクシャクしがちなことです。ブレーキを離して一呼吸置いてから、ゆっくりとアクセルを踏んでいくとスムーズに走り出せますが、アイドリングストップしているところからブレーキをパッと離してアクセルをポンと踏むような操作だと嫌な振動とともにガクガクしながら走り出すことになります。
また、ワインディングで連続でブレーキをかけていくとやや効きが甘く感じる場面がありました。下り坂で強めのブレーキをかけるとやや挙動が乱れることもあり、安心安全なフォルクスワーゲンのクルマとしてはちょっとだけ気になったのは事実です。ただし、スポーツグレードでもない標準モデルとしては問題ないレベルと言えます。
競合車との比較 T-Crossのライバルは?
T-Crossの競合車と比較するとどうでしょうか?車格としてはBセグメントのSUVということで、国産ならトヨタ ヤリスクロス、ホンダ ヴェゼル、日産 キックス、マツダ CX-3、輸入車ならルノー キャプチャーやプジョー 2008と豊富なラインナップが揃う激戦区です。
価格帯を並べるとT-Cross 287〜350万円、ヤリスクロス(HV) 228〜258万円、ヴェゼル(HV) 266〜330万円、キックス 276〜311万円、キャプチャー 299〜319万円、2008 317〜358万円となります。ヤリスクロス(HV)のエントリー価格が安すぎてあまり比較になりませんが、実質中間グレードの239万円スタートと考えるとT-Crossよりも50万円くらい安い価格設定です。他の競合車と比べると概ね前後20万程度の範囲に入り、明確な差はありません。価格帯としては国産車も輸入車もガチンコで戦える時代が来ています。輸入車は高いという先入観を持って早期に検討リストから除外するのはもったいないと思います。国産・輸入車にこだわらずに自分に合ったクルマを探すことをおすすめします。
次にパワーユニット面での比較になります。国産SUVの主力がほぼハイブリッドであるのに対して、輸入車はダウンサイジングターボが主力になっています。ダウンサイジングターボの魅力はやはり高いドライバビリティと巡航燃費の両立です。エンジンの回転数に呼応した出力をシフトチェンジを駆使しながら操る感覚がたまらなく楽しいです。一方で高速道路での燃費は20km/L以上を狙えるくらい優れており、使用環境にもよりますが、ハイブリッドとの燃費差はカタログ数値ほどではありません。
T-Crossはルノー キャプチャーと同様にDCT(デュアルクラッチトランスミッション)を採用していますが、キャプチャーのDCTは変速スピードが早いとは言えず、ややストレスを感じます。プジョー 2008はトルコンATを採用していますが、DCTのようにクイックな変速が持ち味です。DCTのようなダイレクト感こそ無いですが、AT嫌いにもおすすめしたくなる出来の良さです。T-Crossのトランスミッションは、熟成を重ねてきたフォルクスワーゲン伝家の宝刀とも言えるDCTです。小気味よく素早いシフトでストレスがありません。主張は少なめですが、T-Crossの一番の美点です。
まとめ
・ゴルフ8より40kg軽く、DSGが優秀でパワー不足感は無し
・オンザレールの感覚で肩の力を抜いて運転ができる
・ワインディングを一人でドライブする人なら18インチがおすすめ(高い速度域まで上屋の無駄な動きが驚くほど少ない)
・アイドリングストップからのスタートでギクシャクしがち
・国内外の競合車と比べると概ね前後20万程度の金額差であり、明確な差は無い
・高いドライバビリティと20km/L以上を狙える巡航燃費の両立が魅力のダウンサイジングターボ
・小気味よく素早いシフトが一番の美点
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