テスラのメガキャスティングによるアルミダイキャスト製アンダーボディが注目されていますが、過去にもアルミボディを採用するクルマはたくさんありました。オールアルミボディと聞いて思い浮かべるのは初代NSXやアウディA8でしょうか?登場時には一斉を風靡したオールアルミボディを採用したクルマが成功を収めたのか失敗だったのかを考察していきます。
結論としてアルミボディは軽さが最大のメリットであり、製造コストが最大のデメリットです。現在でもオールアルミボディが採用されているクルマはコスト以上に軽さというメリットを享受できるスポーツカーや高級車に限られています。
高級車×オールアルミボディ=成功
高級車とオールアルミボディの組み合わせの代表はアウディA8です。1994年にオールアルミボディを採用した初代が登場して以来、フラッグシップモデルとしてアウディブランドを牽引してきました。現行モデルは2018年に登場した4代目で、オールアルミボディやその他の技術を進化させつつ存続しています。これはオールアルミボディ成功の一例と言っていいのではないでしょうか?
一方、ジャガーのフラッグシップセダンのXJはアルミボディを採用したことで軽量化や燃費向上が実現しましたが、生産工程の複雑さや、修理や部品交換のコストの高さなどが問題となり、販売面でも不振に終わりました。一口にオールアルミボディの高級車と言っても、製造時の品質管理や販売規模、修理などのサービス体制が整っていないと難しいことがわかります。
コンパクトカー×オールアルミボディ=失敗
A8で一定の成功を収めたアウディですが、同じくオールアルミボディを採用したコンパクトカーのA2では失敗したと言えます。1999年に登場したA2はオールアルミボディを採用したことによりライバルであるメルセデスベンツAクラスよりも200kg以上軽量だと言われていましたが、アルミボディ採用のコスト高や3リッターカーコンセプト(3Lの燃料で100kmを走る)が市場に受け入れられなかったことなどの理由から1代のみで姿を消すことになりました。
同じく1999年に発売されたホンダの初代インサイトはオールアルミボディを採用していましたが、販売台数は成功とは言い難いものでした。アルミボディの採用により軽量化と燃費向上が一定の評価を受けたものの2006年に販売終了し、2010年に登場した2代目モデルではオールアルミボディではなく、スチール材とアルミ等を併用したボディでした。
スポーツカー×オールアルミボディ=成功?
オールアルミボディはスポーツカーの世界では比較的成功を収めていると言えます。代表的な例はアウディR8です。2007年発売の初代と2代目でオールアルミボディを採用し、軽量化や高剛性ボディによる動的パフォーマンスに貢献しています。
また、ホンダの初代NSXは世界初のオールアルミボディを採用したクルマとして1999年1990年に発売されました。軽量に仕上がった初代NSXの動的パフォーマンスは世界的に高い評価を受けた一方、種類がことなるアルミ合金を混在して構造材に使用したことによるリサイクル性の問題や、板金修理の困難さから車両保険加入を断られるといった問題が発生し、オールアルミボディの問題点が浮き彫りになったクルマでも有りました。2代目のNSXではアルミだけではなく、高張力鋼板やCFRPも使ったマルチマテリアルのスペースフレーム構造を採用しています。
オールアルミボディからマルチマテリアル化はNSXだけではなく、クルマ業界全体の傾向となっています。理由は超高張力鋼の進化により、衝突安全性で強度が必要な部位にはアルミほどコストを掛けなくても軽くて強い材料が使えるようになったことや、ルーフパネルなどの衝突安全性には寄与しないがより軽くしたい部位にはCFRPなどアルミより軽い材料を使うようになったからです。
テスラ×メガキャスティングアルミボディ=??
テスラのメガキャスティングは他のオールアルミボディとは製造方法や使用部位が異なるものの、オールアルミボディの一種とも言えます。メガキャスティングの採用は始まったばかりなのでその評価は現時点で明確になっていません。しかし、以下の理由から一定の成功を収めるのではないかと考えています。
・高価格帯の車両なので高コストを販売価格で吸収できる
高級車×オールアルミボディ=成功 の例からも、比較的高価格帯のテスラの場合、アルミボディのコストを車両価格で吸収できる可能性が高いと思われます。
・軽量化のスパイラル
EVの軽量化はすなわち、航続距離の増加に貢献します。それによりEVで一番の重量物であるバッテリーを少なくすることができ、さらに軽量化できるという正のスパイラルが出来上がります。
・事故がないクルマの可能性
自動運転技術でも最先端を行くテスラは、当然事故を起こさないクルマを目指しています。事故が起きなければアルミボディの欠点でもある修復性が問題になりません。メガキャスティングが成功するか失敗するかは自動運転技術(予防安全技術)にかかっているかもしれません。
まとめ
これまで述べてきたように、オールアルミボディと言っても採用するクルマの立ち位置や価格帯によってその成否は異なります。また、アウディのようにオールアルミボディを継続採用している車種もあるものの、全体の流れとしてはマルチマテリアルのハイブリッドボディが主流です。さらにそこにアルミダイキャストのメガキャスティングを引っさげて来たテスラにより、またアルミボディの時代が来る可能性が見えてきました。
コメント
nsxは1990年です1999年じゃないです
ペラペラボディアホンダさん
ご指摘ありがとうございます!修正しました!ホンダ車のボディ剛性に対して何か言いたげですね(笑)