レンジエクステンダーEVとプラグインハイブリッドの違いを解説!MX-30 R-EVがプラグインハイブリッドで登場した理由とは

  以前から噂があったMX-30のレンジエクステンダーEV仕様が欧州で発表されました。待望の新型ロータリーエンジンを搭載しており、レンジエクステンダーEVではなく、プラグインハイブリッドとしての登場です。(車名:MX-30 e-SKYACTIV R-EV)欧州仕様で発表されたスペックからわかることや、レンジエクステンダーEVではなくプラグインハイブリッドとなった理由を考察していきます。

欧州で発表されたスペック

・バッテリー容量 17.8kWh

・エンジン排気量 830cc(シングルローター)

・エンジン出力 75PS

・モーター出力 170PS 260Nm

・車両重量 1778kg

・0−62mph( ≒ 0−100km/h)加速 9.1秒

・外部給電出力 1500W

・ハイブリッド走行モード ノーマル/EV/充電

・英国車両価格 31250ポンド(約498万円)〜

・WLTP複合燃費 282.5Mpg(1.0l/100km)

 以上が欧州で発表されたスペックの概要になります。補足をするとハイブリッド走行の充電モードでは目標バッテリー残量を10%刻みで設定できるなど、細やかな配慮がされています。また、英国での車両価格はEV仕様と同じなので、日本での車両価格もEV仕様と同じ451万円〜に設定される可能性が高いと思います。

レンジエクステンダーEVとプラグインハイブリッドの違い

 どちらもバッテリーに電力をためて走行が可能で、エンジンでガソリンを消費しても走ることができるという点では本質的に同じです。違う言い方をすると、エンジンが補助的についているのがレンジエクステンダーEVであり、EV走行用バッテリーと充電システムが補助的についているのがプラグインハイブリッドです。

レンジエクステンダーEVの特徴

  レンジエクステンダーの代表はBMW i3です。i3は2013年から2022年まで生産していたBMW iシリーズの先駆け的なモデルです。2016年にはバッテリー容量を22kWhから33kWhに拡大しました。これによりEPA基準で203kmのEV走行距離を実現しています。レンジエクステンダー仕様は650ccのバイク用直列2気筒エンジンを車体後方に設置し、9Lのガソリンタンク容量を駆使すると約100km航続距離を伸ばすことが可能です。

 最大300km程度の航続距離は使い方によっては十分だと思いますが、レンジエクステンダー仕様には弱点もあります。車両後方に配置したエンジンは振動や騒音が大きく、バッテリーからの電力供給がない状態だとモーター出力がかなり絞られてしまいます。

他社プラグインハイブリッドの特徴

  レンジエクステンダーのEVに比べ、プラグインハイブリッドの場合は十分なエンジン出力があり、バッテリーがなくなっても通常のハイブリッド車相当の加速力が得られます。走行用バッテリー容量は一般的に20kWh前後で、約100kmのEV走行ができるのが一般的です。普段使いはEVとしてガソリンを使わず、長距離移動はバッテリー残量を気にせずにハイブリッド車として使えます。また、製造過程で大量のエネルギーが必要なバッテリーの使用量が少なくて済むというメリットもあります。

 デメリットとしては、エンジンやハイブリッドシステム、燃料タンクなどを搭載するため、重量が増えたり車格に対して荷室が狭くなりがちだという問題があります。EV走行時の電費が悪化する要因にもなります。

MX-30 R-EVの特徴

 一方マツダMX-30 R-EVはどうでしょうか?ベースとなるのはEV仕様のMX-30なので、出自としてはレンジエクステンダーEVに近いと言えます。

 しかし、実際に欧州で発表されたMX-30 e-SKYACTIV R-EVはバッテリー容量をEV仕様から半分の17.8kWhに縮小し、パワーユニットはロータリーエンジンを発電用にしたシリーズハイブリッド(日産のe-powoerと同様のシステム)です。恐らくハイブリッドモードでの燃費は他社プラグインハイブリッドに劣り、EV航続距離は同等程度だと思います。最高出力もRAV4 PHVの306PSに比べると見劣りしてしまいますが、余計な重量物を持ち運ばず、日常使いに過不足のないバッテリー容量はミニマリストのような潔さを感じます。ロータリーエンジンは振動が少ない利点があり、小さくて複雑な機構を持たないので車両価格も抑えられると思います。

 まとめると、他社プラグインハイブリッドと同様のEV走行距離や航続距離を持ち、ロータリー特有の低振動でEVの世界観を崩さず、比較的リーズナブルに購入できる引き算の美学が光るマツダらしいクルマです。

レンジエクステンダーEVではなくプラグインハイブリッドにした理由

 マツダは以前、ロータリーエンジンをレンジエクステンダー用に使うデミオEVのプロトタイプを制作していたこともあり、MX-30にはロータリーエンジンのレンジエクステンダー仕様が追加されるという噂でした。

 しかし、マツダはやはり一味違いました。プラグインハイブリッドにすることでロータリーエンジンの強みをさらに活かしてきたのです。レンジエクステンダーEVにする場合、エンジンはあくまでも補助的に使うだけなのでEVのバッテリー容量は変えずに追加することになります。そうすると重量増とコストアップにより、重く高価なクルマになってしまいます。また、新型ロータリーエンジンを待ちわびたユーザーにとっても、せっかくのロータリーエンジンが活躍する機会が少ないのは残念なことです。

 そこで、デミオEVレンジエクステンダーのような小排気量(330cc)ロータリーエンジンではなく、排気量を830ccまで上げた新型ロータリーエンジンを開発。これにより熱効率を改善しつつ、通常のガソリンエンジンの1.2L相当の電力をモーターに供給できるようにしました。バッテリー容量はEV仕様よりも半分に減らしていますが、エンジンからの電力供給と合わせてモーター出力を125kW/170PSまで上げることができました(EV仕様は107kW/145PS)。また、バッテリー容量を減らした分車両価格をEV仕様から上げることなく、長い航続距離とパフォーマンス向上の両立を成し遂げたことになります。

MX-30 R-EVの使い方

 使い方は他社のプラグインハイブリッドと同じと思って良いでしょう。自宅にEV用充電器が有ることが前提です。日常生活や通勤等では自宅充電器で充電した電力だけで走行し、ガソリンは使いません。電気だけで走行できる距離は、EV仕様のWLTCモードを参考にすると128km相当です。これだけあればほぼ全てのシーンで電気だけで走れます。EVとは違い余力を残す必要はないので、バッテリーを気にせず使い切れるのも魅力です。

 プラグインハイブリッドにすることで嬉しいのは長距離ドライブもらくらくこなせてしまうことです。燃料タンク容量は50Lとのことなので、600km以上は余裕でこなせるはずです。EVとは違い、連休の高速道路での充電渋滞や冬季の長時間渋滞を気にする必要がないことが強みです。

まとめ どんな人におすすめか

・通勤などの近距離移動をスマートにコスパ良くこなしたい人

・長距離移動は頻繁ではない、もしくはその時の燃費はあまり気にしない人

・EVが欲しいが連休の充電渋滞や冬季の長時間渋滞が心配な人

・新しい乗り物が好きでロータリーエンジン好きな人

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