【試乗記】私がCX-60を買わなかった理由

 前回のCX-60の記事では3.3Lディーゼルマイルドハイブリッド(AWD)に乗って感じたステアリングフィールの悪さなどを書きましたが、今回はガソリンモデルの25S L Package(FR)に乗ることができました。通勤と長距離ドライブのクルマとしてCX-60を検討していましたが、購入は見送ることとしました。今回は購入見送りの理由と、CX-60の総括をお伝えしたいと思います。

試乗車情報

 前回の試乗車

 CX-60 XD-HYBRID Premium Sports e-SKYACTIV D 3.3 AWD
 装着タイヤ:BRIDGESTONE ALENZA 235/50R20
 車検証重量:1940kg(前軸1060kg 後軸880kg)
 前後重量配分 54.6 : 45.4
 走行距離:数百キロ

 今回の試乗車

 CX-60 25S L Package SKYACTIV-G 2.5 FR
 装着タイヤ:BRIDGESTONE ALENZA 235/50R20
 車検証重量:1720kg(前軸900kg 後軸820kg)
 前後重量配分 52.3:47.7
 走行距離:百数十キロ

FRでも低速域でのステアフィールの悪さ有り

 まずは前回の試乗で気になったステアリングフィールの希薄さと低速域でのハンドルの重さについてです。今回乗った25Sは2.5LのNAガソリンエンジンでFRということもあり、前軸重量はXDマイルドハイブリッド(AWD)よりも160kg軽量でした。そのせいか、低速域でハンドルの重さが気になることはほとんど無く、これなら女性でも運転できるレベルです。

 一方で低速域でのステアリングフィーリングはAWDのディーゼルと大差無く、あまり良い印象ではありませんでした。これはキャスター角が立っていることに起因すると考えられます。キャスター角が立っていると、クルマが直進しようとするセルフステアの効果が少なくなります。これにより、(特に低速域で)ハンドルが直進状態に戻らないので人間の手で戻す必要があったり、直進するためにハンドルを微修正する必要があります。

 そもそもキャスター角が立っている理由は、『別冊モーターファン CX-60のすべて』によると、前輪と後輪の作動軸(タイヤの上下軌跡のこと)を揃え、クルマのピッチングセンターを車両後方に配置するため、とあります。やろうとしていることはわかりますが、ステアリングフィールへの背反はどのように考えていたのでしょうか?ステアリングフィールとピッチング挙動の両立については今後の年次改良に期待しています。

トルコンレス8ATトランスミッションのシフトショック

 こちらも前回の試乗で気になったトランスミッションのシフトショックやギクシャク感についてです。CX-60ではエンジンとトランスミッションの前後長を短くしつつ、燃費を改善するためにトルクコンバーターを廃止した新開発ATが採用されています。

 そもそもトルクコンバーターではエンジンとトランスミッションの間の動力をゆるく繋いだりゆるく切り離したりする仕事をしていますが、このトルクコンバーターを湿式多板クラッチにしたことで、動力の伝達ダイレクトさが悪い方向で出てしまっています。

 具体的には発進加速時のギアチェンジで前後に揺さぶられたり、信号で停まるときのシフトダウンでもシフトショックを感じるほど、減速に段付きがあります。一方、強めの加速ではタンッ、タンッ、と小気味良いシフトアップをしてくれるという二面性を持っています。また、オートホールドを使わないと登り坂の停車状態からDレンジでも下がってしまうということも起きます。

 試乗車は百数十キロしか走っていない個体だったので、当たりが付いていない(ECUの学習が進んでいない?)可能性もあります。現に試乗の後半ではシフトショックは気にならなくなってきました。また、年次改良で湿式多板クラッチの繋がり方が良くなれば、良い方向に化ける可能性は十分にあります。

25Sのメリットが薄い…軽快さがなくゆっさりと重い動き

 CX-5のベースグレード(2.0Lガソリンエンジン)は望外に良いフットワークをしていましたが、CX-60のガソリンモデルはそうはいきませんでした。意外とフロントヘビーな重量配分も効いていそうです(前後重量配分52.3:47.7)。

 乗り心地の面では軽いことによるひょこひょことした動きが気になります。特にピッチング(前後)方向です。キャスター角を立ててまでピッチングをコントロールしようとしたはずなのに、なぜこんなに動いてしまうのでしょうか?残念なポイントです。

CX-5ではできたのに…MTモードが無い!

 CX-5ではATセレクターにMTモードがついていました。そのためワインディングでは、MTモードに固定して自分でシフト操作をすることで、中高回転を多用しキビキビとした走りが楽しめました。しかし、CX-60(というか最近のマツダ車)にはMTモードがないので、パドルシフトでシフト操作してもしばらくするとDレンジに戻ってしまいます。せっかくのマツダ製NAガソリンエンジンを思う存分楽しめないのは残念です。

こんな人にはオススメ!高速道路が本籍地!?

 私が想定していた使い方は片道数キロの通勤 + 年数回の長距離ドライブなので、ディーゼルは合わず、経済メリットも少ないこともあり、ガソリンエンジンを検討していました。しかし、ここまでの記事の内容の通りガソリンエンジンのメリットも少ないと思い、私は購入を見送ったCX-60ですが、高速道路を多用する人にはオススメできます。

 運転視界は高くて良好な上、ゆったりとした動きは長距離ドライブでも疲れ知らずであることは間違いありません。3.3Lディーゼルエンジンの燃費はそこらの2.0Lディーゼルよりも良いので経済的にも助かります。

 街中でも高速道路でも万能な作りをしているクルマは世の中に多くありますが、CX-60は高速道路での移動に大きく振ったクルマだと思います。ここまで色々と書いてしまいましたが、高速道路メインの使い方でデメリットにも納得できるのであれば、とても良いクルマだと思います。

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