【試乗記】運転のしやすさ◎ ブレーキ✕ 2022年式トヨタ ノア

 子育て世代必見の新型ノアを試乗チェックしてきました。私自身1歳の子供を持つ現役子育て世代ではありますが、運転を楽しみたいクルマ好きとしては正直ミニバンを持つことには抵抗感があります。そんな私の視点ですが、フルモデルチェンジしたファミリーミニバンである新型ノアの性能を率直にレポートしたいと思います。

新型ノアの強み①:クルマの大きさを感じさせない運転のしやすさ

 試乗してみて一番印象に残ったのは、運転のしやすさです。ミニバンを検討される方の中には運転が得意ではない人も多くいらっしゃることと思います。そうでなくてもクルマの大きさを見て運転する自信を無くしてしまう人もいます。しかし、実際に運転席に座ってハンドルを握ると運転視点が高くて見晴らしが良く、死角も少ないため運転に対する不安はだいぶ軽減されると思います。

 さらに接近通報とアラウンドビューモニター付きであれば安心感は桁違いです。前方か後方に障害物があると自動でディスプレイが切り替わり、カメラ映像とソナーによる障害物との距離感+アラウンドビューが表示されます。狭い駐車場でも周囲の物にクルマを寄せやすいと感じました。この取り回しの良さなら、コンパクトカーを普通に運転できる人であれば心配いらないと思います。

 運転のしやすさは視界だけではなく、運転操作についても言えることです。新たに採用したTNGA骨格によりボディ剛性が上がり、ハンドル操作に対するクルマの挙動が正確になりました。これによりハンドル操作の修正量が減り、楽でスムーズな運転ができます。

 また、緩やかな登り坂や下り坂でもアクセル一つで速度をコントロールしやすく、長距離の運転でも疲れは少ないはずです。

新型ノアの強み②:静粛性向上!

 試乗したのは先代と同じ2ZRエンジンのハイブリッドモデルですが、先代よりも明らかに静粛性が向上しています。特に強めの加速をした時のエンジンのうなり音が軽減され、不快に感じさせない音の演出がなされていると思いました。試乗車が上級グレードのS-Zだったこともありますが、エンジンルームからの透過音を遮音材で抑えていることに加え、エンジン回転数の上げ下げも含めて制御されています。もちろんエンジン音以外の音に対する静粛性も向上しており、車内での会話の聞き取りやすさに配慮した設計だと思います。

ちょっと気になる不満点①:ミニバン以外と比べると走行安定性は劣る

 もちろんミニバンとしては仕方がないことですが、走行安定性は他のボディタイプのクルマと比べると劣ります。特にハンドル操作や横風による左右方向のふらつきは、乗員に与える安心感や乗り心地の面であまり良くありません

 走行安定性が良くない原因は、ミニバン固有のものがほとんどです。重心の高さ、横風を受けやすいボディ形状、取り回しのために制限されるクルマの横幅などです。上級モデルのアルファードの場合、全幅がノアよりも100mm以上広い1850mmあることや、リアサスペンションにダブルウィッシュボーンを採用している理由はここにあると考えられます。

 ノア・ヴォクシーに試乗してみて安定感に不満を感じたり、高速道路での移動が多い人はアルファードを検討してみるのも一つの手だと思います。また、逆に一般道の走行がメインであればアルファードの性能はある意味やや過剰気味であり、ノア・ヴォクシーでも十分と言えます。

ちょっと気になる不満点②:段差乗り越え時の乗り心地

 もう一点、ちょっと気になった点としては段差を乗り越えた際の乗り心地の悪さです。特にリアタイヤが段差を通過する時に突き上げ感が伴います。

 こちらも根本的な原因はミニバンというボディタイプにありそうです。ミニバンの場合、もっとも重視されることの一つは室内空間です。そして室内空間を確保する時にトレードオフになるのがサスペンションのジオメトリーです。近年のクルマは突き上げ系の乗り心地を改善するため、リアサスペンションの取付部を車両上側に配置することが多いですが、ミニバンの場合、床面を低くして低床化し、室内空間を確保する必要があるので、サスペンションの取付部を上方に配置することが出来ません。カタログの写真を見てもリアサスペンションの配置が苦しそうです。

 今回の試乗車は17インチホイールを装備していたので、16インチホイールのグレードを選べば乗り心地は改善すると思われます。しかし、そうすると今度はハンドリングや走行安定性とのトレードオフが生じます。前述の通り走行安定性にも余裕があるわけではないので手放しで16インチホイールをオススメすることはできません。

 ファミリーカーとしてSUVとミニバンを比較検討している方もいらっしゃると思いますが、走行安定性や乗り心地に関してはSUVの方が基本的には優れていると言えます。

だいぶ気になる不満点!:ハイブリッドのブレーキコントロール性

 正直なところ、走行安定性や乗り心地よりもだいぶ気になったのがブレーキです。トヨタのハイブリッド車の場合、ブレーキのシステムが少々複雑です。モーターを使った運動エネルギー回生システムと摩擦ブレーキを協調させながらブレーキペダルの踏み込み量に応じて減速します。しかし、今回試乗したノアのハイブリッドではその辺りの制御が上手くいっていないと感じました。

 具体的には、低速で弱くブレーキを踏み込んでいる時に急に減速が強まる、ブレーキの反力が強まり同じ踏力で踏んでいるのに同じ減速ができない、強めのブレーキを踏むと途中でブレーキペダルの反力やブレーキの効きが変わる、といった現象がありました。普段ガソリンエンジン車に乗っている場合、違和感を感じる方がいらっしゃると思います。 

オススメはガソリンモデル

 ハイブリッド車のブレーキが気になる方はガソリンエンジン車を選べば問題ありません。また、ガソリンエンジン車が搭載しているエンジンはM20AというTNGAの新しいエンジンです。フィーリングは上質で動力と燃費性能のバランスも良く、国内ではレクサスUX(車重1500kg弱)やハリヤー/RAV4(車重1600kg前後)にも搭載されており、車重1600kg+αのノア・ヴォクシーでも十分な動力性能を持っていると言えます。私としてはブレーキの不満もあるので選ぶなら断然ガソリンエンジン車です。

まとめ

・運転が苦手な人にもオススメできる運転のしやすさ(視界、アラウンドビューモニター、操縦性)

・静粛性が向上し車内で快適な会話が可能

・走行安定性や乗り心地に関してはSUV等の方が基本的には優れている

・ハイブリッド車のブレーキのコントロール性は気になる人は気になる

・オススメはM20Aを搭載するガソリンエンジンモデル

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