なぜ今PHEVなのか
“最強”のパワートレインは何か…?現在考えられる現実的な答えはPHEVだと言われています。もちろんCO2削減の観点での”最強”です。
BEV(バッテリーEV)の場合リチウムイオンバッテリーを製造する過程で電力を多く消費するため、バッテリー容量が大きいクルマほど環境負荷が大きくなってしまいます。また、希少金属であるリチウムを使っている点も供給量という観点で問題があります。
そのため、特に発電量に占める再生可能エネルギーの割合が少ない国や地域では、バッテリー容量を少なく作り、多くの車両に搭載していくのが望ましいと考えられます。この考え方には日産&三菱のPHEV・軽EVのバッテリー戦略がまさに当てはまります。
これらに搭載される20kWhというバッテリー容量は、ハイブリッド用(1kWh)よりは大きく、一般的なEV(60〜100kWh)よりは少ない容量になります。このバッテリーをPHEVと近距離特化型の軽EVで共用しています。(バッテリーパックは独自)これらの小容量のバッテリーでも100〜180km程度走ることができるので、普段の通勤やお買い物の用事をこなすには十分です。賢く使うと燃料代も節約でき、環境にも良く、ガソリンを入れに行く手間も省けるという三方良しの状態になります。この三方良しの状態こそがサスティナブルなカーライフ実現、引いてはサスティナブルな社会実現への有力な道筋だと思います。
今回の三菱アウトランダーPHEVは、国内のPHEVの火付け役であった先代からフルモデルチェンジし、PHEVとしてだけではなくクルマそのものの魅力を高めています。
アウトランダーPHEVの魅力① ブレーキタッチが優秀!
一部のハイブリッド車やバッテリーEVで気になりがちなブレーキタッチですが、アウトランダーPHEVは大変優秀でした。摩擦ブレーキと回生ブレーキの協調が自然に出来ており、段付きやギクシャクが一切ありません。
弱い踏力で回生ブレーキの効きが強めですが、止まる寸前の微妙なブレーキコントロール性は素晴らしいです。
アウトランダーPHEVの魅力② 静かで落ち着きのある加速
当然ですが、エンジン車から乗り換えると驚くほど静かです。EV走行モードだけではなく、パワーモードでエンジンが始動する程アクセルを踏み込んでも、車室内に入る振動や音が最小限に抑えられています。
人の感覚というのは面白いもので、エンジン音や振動がないとあまり加速感を感じることができません。そのため、悪い面としてはエンジン車よりもドーパミン分泌が少なく、快楽は少なめです。良い面としてはその分ジェントルに乗りこなすことができ、同乗者に優しくなれます。
アウトランダーPHEVの魅力③ 洗練された室内空間
クルマに乗り込んでの第一印象は内装の質感が増したことです。ラグジュアリーというよりは、モダンで洗練された内装というイメージです。
決して安くはない車両価格ですが、本来パワートレインにコストが掛かるクルマは内装が見劣りしがちです。その点、アウトランダーPHEVは見劣りしない仕上がりになっていると思います。
特にシート表皮はアルカンターラ調と合皮の組み合わせになっており、いい感じに体にフィットしました。欧州車のような雰囲気です。ドアの内装も何種類かの材質が組み合わされ、手が触れやすいところはソフトな手触りになっていて好印象です。
アウトランダーPHEVの魅力④ 強力な非常用電源としての価値
アウトランダーPHEVの魅力として忘れてはいけないのが非常用電源としての有用性です。三菱の試算によると、一般家庭の消費電力を1日当たり10kWhとすると、ガソリン満タンで最大12日分の電気を賄えるとのことです。
私自身の経験としては東日本大震災で被災し、数日間停電が続いたことがあります。大変だったのは停電だけではないですが、もしあのとき電気が使えたら、テレビで外の情報を見たり暖を取ったり明かりを付けたりと、安心を得られたのは間違いありません。IHコンロがあれば炊き出しにも利用できます(あのときは炊き出しに使うガスボンベも不足していました)。震災から10年以上経ち、いつの間にか家族を持つ年齢になってしまいましたが、いざというとき家族をどう守り安心させるのかを考えると、PHEVができることの価値は大きいように思えます。
アウトランダーPHEVの不満① 電動パワステのチューニングの不自然さ
走りに関して気になったのは電動パワステのチューニングです。直進状態のハンドル位置から拳一個くらいの範囲では戻し方向のセルフステアが強く、操舵力も重めでした。そのため直進時のハンドルの手応えが分かりづらく、ステアリングの切り戻しが一発で決まらない場面がありました。
ただしこの辺りのフィーリングの良し悪しは個人の主観も大きいので、試乗するときにちょっと気にするぐらいで良いと思います。
アウトランダーPHEVの不満② 3列目シートの使い勝手
3列目シートの使い勝手はやはり厳しいです。格納状態からの出し入れ方法はなるべく簡単にできるように工夫されていますが、乗り降りの難しさや足元スペースは車両パッケージ上どうにもなりません。正直これを不満として書くかは迷いました。
限られたスペースで必要な要件を満足させることの難しさは、私自身設計の経験があるのでよくわかります。他のSUVでも3列目シートの使い勝手はかなり限定的なものではありますが、PHEVの場合はさらに厳しくなります。なぜなら3列目シートは格納することが前提ですが、格納先の床下には燃料タンクやリアモーター、場合によっては走行用バッテリーやEV用のパワーコントロールユニットを配置しなければなりません。そう考えるとPHEVに3列目シートがついているだけでもありがたいですね。
具体的な使い方は、夫婦+子供2人の家族構成で普段はシートを格納しておき、祖父母の家に遊びに行った時に子供2人を3列目に乗せ、2列目に祖父母を乗せてお出かけする、という使い方が想像できます。
3列目シートは中間グレードのGで有り無しを選ぶことができ、上級グレードのPには標準で備わっています。メーカーとしては、格納しておけば邪魔にはならず、プラスアルファの価値を提供できると判断したようです。
まとめ
○PHEVのバッテリー容量は普段の通勤やお買い物の用事をこなすには十分
○賢く使うと燃料代も節約でき、環境にも良く、ガソリンを入れに行く手間も省ける
◎摩擦ブレーキと回生ブレーキの協調が自然に出来ており、段付きやギクシャクが一切無く、止まる寸前の微妙なブレーキコントロール性は素晴らしい
◎一般家庭の消費電力を1日当たり10kWhとすると、ガソリン満タンで最大12日分の電気を賄える
△直進状態のハンドル位置から拳一個くらいの範囲では戻し方向のセルフステアが強く、フィーリングが取りづらい
。直進状態のハンドル位置から拳一個くらいの範囲では戻し方向のセルフステアが強く、操舵力も重め
△3列目シートの使い勝手はやはり厳しいが、子供2人を3列目に乗せることは可能
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